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貝類の本の紹介

海を歩けば―アジアの生物多様性に魅せられて

2020年2月10日

海を歩けば―アジアの生物多様性に魅せられて
小菅丈治 著(沖縄タイムス社)

本書は,2015年7 月に小菅丈治氏により著され,沖縄の地元新聞社から出版された。小菅さんは石垣島に在住され,自然をこよなく愛し,観察を続けられているナチュラリストであるが,広くアジア地域においても観察の範囲を広げられており,世界的な視野に立った論評が展開されている。対象は貝類,カニ,ヤドカリ,星虫等多岐にわたり,内容も生態や共生など他,漁労や地史にも及んでいて,広い対象の読者を満足させてくれると思う。具体的内容は是非とも本書を読んで頂くこととして,14に分かれた,各項目を列挙する。

1.浜辺のバザール, 2.ヤドカリ的生活, 2.ホシムシが支える村の経済, 4.魚の目を持つ男,5.瓦家の住人, 6.マドガイに朝の光射す, 7.黄海の雪とスナヒトデ, 8.チゴガニの「元祖」を求めて, 9.繁殖期の起源, 10.木曜島と沖縄, 11.ここに幸ありーフィリピン・フィリピン・珍しい貝を獲る漁業, 12.海と島の間に, 13.カニの歌に先人の自然観を読む, 14.安南の記憶

貝類に関する話題には小菅さんならでは,共生二枚貝の観察について詳しいが,それ以外にも,貝屋的視点で見れば,珍貝や高価な貝類についての話題もある。テラマチダカラで有名な寺町氏が沖縄から発見したヒメダカラを,サザナミダイという魚の胃袋から発見し,胸が高鳴ったとの記述があるが,貝類関係者は皆,その時の情景が目に浮かぶのでないだろうか。私自身は未だ行ったことはないが,フィリピンは貝類の宝庫であり,バリカサグ島やシキホール島での刺網などで漁獲される貝類について紹介され,巻頭にはウミノサカエイモやクレナイセンジュ等の珍貝の他,熱帯植物の葉っぱに漁獲されたばかりのキイツブリやマツカワガイ,ショウジョウガイ等が無造作に並べられているカラー写真もある。

上記14章には,沖縄のみならず,氏が自らベトナムや中国南部等に移住あるいは訪問されて,実見された経験に基づいている。よって,その際に遭遇した様々なエピソードを交えながらの文章は,読者を現地へ誘いながら語りかけている。私は,小菅さんのこうした素晴らしい著作を,心地よく拝読した者の一人として,ここに,ご一読をお薦めする次第である。

(紹介者:久保弘文)

出版社ウェブサイト:
http://shop.okinawatimes.co.jp/photo_up/detail/839470

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