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貝類の本の紹介

LIXIL BOOKLET ニッポン貝人列伝 時代をつくった貝コレクション

2020年2月10日

LIXIL BOOKLET ニッポン貝人列伝 時代をつくった貝コレクション
石本君代・奥谷喬司 著(LIXIL出版)

本書と同名の企画展が東京と大阪で開催されたが,その企画展を見ていない人々には,会場で即売されていた上記のBOOKLET が企画展の内容を伝えてくれて,その全貌が手に取るように理解できる。筆者もその一人で,ページ数が少ないないながらも,懐かしい先輩方のお写真を見て,または著書等の内容を見て学習をしたこと,あこがれていても手にいれることができなかった数々の貝の姿に接することが出来る本書は,かつての懐かしい人びとに会った気持ちのようで「涙がでるほどに」嬉しい。まず時代をつくった貝研究家,コレクションを形成した10名の方々が順次に登場するが,以下にそのお名前を列挙しよう。平瀬與一郎(1859-1925),平瀬信太郎(1884-1939),黒田徳米(1886-1987),菊池典男(1915-2013),鳥羽源蔵(1872-1946),吉良哲明(1888-1965),山村八重子(1899-1996),波部忠重(1916-2001),櫻井欽一(1912-1993),河村良介(1898-1993)。

私見ながら本書の特徴を列記してみたい。例えば,(1) 冊子としては大分な書物ではないが,有名な貝類が芸術的な配列などを加えて登場する。例えばヒラセイモガイ,サクライダカラ,ハデスマキボラ,カワムラニンギョウボラ,トバマイマイ,サダミマイマイなどである。(2) 歴史的な貝書(平瀬與:貝千草,平瀬信:天然色日本貝類図譜,黒田・波部・大山:相模湾産貝類,吉良:ゆめ蛤,原色日本貝類図鑑,波部:続原色日本貝類図鑑など)が話の合間に現れる。中でも「貝千草」と「ゆめ蛤」の一部は出版当時の印刷に似せてやや縮小してページに挟み込んでくれていることは,これまでの幾多の貝書にはみられない配慮の仕方で良く考えられた企画だと思う。筆者にとっても吉良図鑑の初版版の表紙のジュセイラなど3種がなつかしい。(3) 著名な方々のコレクションの一部(黒田:キセルガイ,マイマイ類,鳥羽:トバマイマイやナンブマイマイ,河村:美麗な海産貝類など)が紹介されている。(4) 列伝であるので,それぞれの方々の貝類に対する愛情?がぐいぐいと伝わってくる。(5) 文末にまとめられている奥谷氏の列伝の総括的な記述(日本の貝類学を築いた貝人たち)も読みごたえがあり,後輩の貝人には有益な情報である。本書は未読の方々への「玉手箱」ではなかろうか。

(紹介者:湊  宏)

出版社ウェブサイト:
http://www.livingculture.lixil/publish/----5/

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