ヒラタヌマコダキガイは何処から来て、何処に行くのか?:日本・
韓国・ロシア・アメリカ合衆国産ヌマコダキガイ類の形態比較
佐藤慎一(東北大学総合学術博物館)
ヒラタヌマコダキガイPotamocorbula sp. は、1992年以降に有明海に見られるようになった外来種とされ、1997年8月には潮止後の諌早湾調整池において他の海生貝類が死滅した後に本種だけが急激に増殖した。同様の貝がアメリカ合衆国のサンフランシスコ湾にも人為的に移入され、1986年以降に現地で大増殖している。演者は日本の北海道クッチャロ湖、青森県尾駮沼、茨城県涸沼、福岡県柳川市、韓国の仁川市、群山市、アメリカのサンフランシスコにおいてヌマコダキガイ類の集団標本を採集し、それにロシアのアムール河河口の標本をあわせて、殻形態の比較を行った。その結果、それらを5つの形態型に分けることができた[(アムール河・群山・有明海・サンフランシスコ)(仁川)(クッチャロ湖)(尾駮沼)(涸沼)]。今後、
遺伝子解析や模式標本の確認を行う予定だが、現時点ではヒラタヌマコダキガイはアムール河や群山などに自生し、それが有明海やサンフランシスコ湾に人為的に移入されたものと考えられる。
Sato, Shin'ichi: Morphological
comparison of shells in Potamocorbula
spp. from Japan, Korea, Russia, and USA.