群馬県片品村の2種のマメシジミ類について

 

家山博史(愛媛大)・高橋 茂(群馬県吾妻町)

 

 片品村花咲の養魚場から大小2種のマメシジミ類が見つかった。大きいものは日光や水上町で見つかっているハイイロマメシジミP.(Pisidium) casertanumと思われるが,小さいものは外鰓と入水開口が無く,靱帯はenclosedであることからP.(Neopisidium) sp.であると思われた。この2種は混生し,ハイイロマメシジミの幼貝とP.(Neopisidium) sp.との区別は外形からはかなりむずかしい。両種を区別することなくHeight indexConvexity indexを殻長に対する散布図でみると,幼貝のレベルで両種が重なってしまう。そこでこの重なっている部分の貝について外鰓と入水開口の有無について調べた。その結果,外鰓は殻長2.4mm前後にならないと識別できないこと,入水開口は殻長1.5mm以上でできていることが分かった。また,鰓の形そのものに違いのあることが分かった。つまりハイイロマメシジミの幼貝の内鰓は下端が鋭く明瞭な三角形となり,上昇葉が大きいのにたいして,P.(Neopisidium) sp.の幼貝は内鰓の下端が丸くなり,上昇葉が小さい。後者は前年度報告した群馬県水上町上ノ原のP.(Neopisidium) sp.と同じものと思われる。この貝は群馬や栃木に広く分布している可能性があり,大型のマメシジミ類が生息している場所では,同時に採集された小さな貝を詳しく調べる必要がある。

 

Ieyama, H. and Takahashi, S.: Two species of Pisidium from Katashina in Gunma Prefecture.