○木村妙子(三重大・生物資源)・藤岡エリ子(汐川干潟を守る会)・木村昭一(愛知県立三谷水高)・青木茂(東大院・農)
干潟やその周囲に発達したアシ原湿地に生息する貝類は,多くの種が絶滅に瀕し,早急な保護の必要性が叫ばれている。しかし,その基礎となる生態の知見は乏しい。今回,私たちは干潟およびアシ原湿地に生息するヘナタリCerithidea
cingulata,フトヘナタリC. rhizophorarum,シマヘナタリC. ornata,
カワアイ C.djadjariensis,ウミニナ Batillaria multiformis,
ホソウミニナB. cumingi ,イボウミニナ B. zonalis,オカミミガイ Ellobium
chinense,キヌカツギハマシイノミガイ Malampus sincaporensis の9種について,それらの卵と幼生形態,初期生活史の知見とその比較結果を報告する。産卵期と卵塊および卵の形態は野外と室内飼育で観察し,飼育した幼生の形態を光学顕微鏡とSEMで観察した。シマヘナタリは佐賀県の塩田川河口,他の8種は愛知県の汐川河口と佐奈川河口の試料を用いた。野外観察と室内実験からいずれの種も6月から8月が産卵期と考えられた。卵嚢や卵塊の形態は種によって多様であった。卵はフトヘナタリ,シマヘナタリ,ウミニナは1個の卵嚢内に通常複数の卵を持ち,他の6種は1個の卵嚢内に1個の卵を持っていた。6種のうち,最も卵径の大きいホソウミニナのみが直達発生であり,他の種は全て浮遊幼生が孵化した。浮遊幼生の面盤や着底稚貝の殻の形態特徴は種間で差異が認められた。
Taeko Kimura, Eriko Fujioka, Shoichi Kimura and Shigeru Aoki :
A comparative morphology of eggs and larvae of nine gastropods
in tidal flat and marsh of the reed.