徳島県三嶺で見つかったマメシジミについて

 

家山博史゜(愛媛大)・熊沢秀雄(高知医大)

 

 2001625日徳島と高知の県境に位置する三嶺(標高1893m)の中腹(1300m)から徳島・三嶺を守る会の増谷正幸氏らによって発見されたマメシジミの形態を調べた。調べられた貝の中で最も大きいもので殻長4.94,殻高4.04,殻福3.00mmあった。殻は横長の卵形で,背縁に肩は見られず,後縁も截断状にならない。殻頂はやや広く,普通に突出し,前端から殻長の約59%に位置する。殻は薄く,薄褐色で光沢がある。ホ板はやや広く,緩やかに弧を描き,A1-P1間距離は殻長の50%を越える。靭帯はenclosedで長い。外鰓は短く,内鰓の第911鰓糸から始まる。入水開口があり,pre-siphonal sutureは短く,pedal slitの約1/9長である。外套膜縁の筋束は明瞭で,筋痕は套線から離れている。腎臓背葉は四角形で,側葉を覆う。これらの特徴から,このマメシジミはPisidium casertanumと推察される。徳島では以前にコバンナリマメシジミP. ellipticumが見つかっているが,西宮市貝類館所蔵の黒田博士収蔵標本にある富山県のコバンナリマメシジミとは形が異なっている。また,Korniushin(1999)は琵琶湖のP. cinereum lacustreP. casertanumとしたが,それは殻高が高く,套線から離れている筋痕が前方に限られることで本種とは異なっている。形が似ていたのはP. cinereum nikkoenseニッコウマメシジミで,腸の配置(胃からでた腸が1回転して後方に走る)の点でも似ている。

 

Ieyama, H. and Kumazawa, H. : Pisidium sp. From Mt. Sanrei in Tokushima Prefecture.