エゾバイ科(Buccinidae)2種の染色体
小澤政昭°・所瑞恵・鈴木淳志(東農大・水圏生物)

貝類の染色体研究は、多板綱、頭足綱、掘足綱、腹足綱、二枚貝綱の染色体調査がなされているが、主に腹足綱と二枚貝綱に集中している(Nakamura,1986;他)。本研究ではこれまでに染色体報告のなされていない新腹足類、エゾバイ科のエゾボラ(Neptunea lyrata)とヒメエゾボラ(Neptunea arthritica)2種の染色体調査を行った。染色体観察方法については、殻口にコルヒチン(1%溶液)を注射し2〜6時間処理を行いエアードライ法により染色体標本を作成した。染色体調査の結果、エゾボラ2n=62±、ヒメエゾボラでは2n=70本であった。このことからエゾボラ、ヒメエゾボラは他の新腹足目の種の染色体数の約2倍となっていることから、4倍体もしくは高次倍数体起源の貝類であることが推定された。

Masaaki Ozawa, Mizue Tokoro, Atsushi Suzuki: Chromosomes of two species of Neptunea in the family Buccinidae.