東京湾産バカガイの酸素消費量、アンモニア態窒素排泄量および無機リン酸塩態リン排泄量に及ぼす水温の影響 尹 榮泰°・土屋 光太郎・瀬川 進(東京水産大学)

バカガイ Mactra chinensisは環境変動の大きい潮間帯中・下部砂泥底に棲息する二枚貝であるが,環境要因の影響に関する研究は乏しい。本研究では環境要因の一つである水温がバカガイの酸素消費量、アンモニア態窒素および無機リン酸塩態リン排泄量に及ぼす影響について検討を行った。
東京湾(採集時水温約20℃)で採集した、軟体部乾燥重量(W)0.033−2.71g(殻長22.5−67.2mm)のバカガイ20個体について水温5、10、15、20、25、30、35℃における個体あたりの酸素消費量(R)、アンモニア態窒素排泄量(EA)および無機リン酸塩態リン排泄量(EP)を測定した。 R、EAおよびEPは、それぞれ0.018−0.75ml O2、 0.047−1.50μg atm NH4+-Nおよび0.019−0.51μg atm PO4-Pの値を示した。RとEAは5℃から25℃で水温の上昇に伴って増加し、25℃以上では減少する傾向が見られた。Q10値によるとRとEAは10℃と30℃で変曲点があり、より低水温および高水温では異なる傾向を示した。
それぞれの水温におけるR、EAおよびEPとWとの関係はR = aWb、EA = aWbおよびEP = aWbで表わされた。b値はRとEA では10−20℃でほぼ一定の値を示したのに対して5℃と25−35℃ではばらついたことから、より低水温と高水温では体サイズにより水温の影響が異なることが示唆され、低水温のQ10値は特に小型個体で高い値を示した。このことから、生活史の初期には水温変化が代謝に及ぼす影響がより大きいことが考えられた。

Young Tae Yoon, Kotaro Tsuchiya and Susumu Segawa : Effects of temperature on oxygen consumption, ammonia excretion, and inorganic phosphate excretion rates of the surf clam, Mactra chinensis (Bivalvia: Mactridae) .