萩市笠山のアンキアラインプールに固有なシンサクムシロ(改称)の形態と棲息環境(腹足綱:オリイレヨフバイ科)
田牧 愛°・福田 宏(岡山大学農学部水系保全学)

 山口県萩市北部に位置する笠山には、アンキアラインプールが多数存在し、そのうちの一つであるえび池には、新腹足類の一未記載種の棲息が確認された。この種は福田(2001)によってシンサクバイと和名新称されたが、形態や類縁についてはいまだ報告されていない。
 本種は、後足触角をもたないこと等から当初 Buccinidae エゾバイ科に属すると考えられていたが、歯舌を観察したところNassariidae オリイレヨフバイ科に属することが明らかとなった。よって本種をシンサクムシロに和名改称する。また、殻や歯舌の形態からはNassarius (Hima) fraterculus (Dunker, 1860) クロスジムシロ種群(N. (H. ) hypolius (Pilsbry, 1895) アオモリムシロ、N. (H. ) hiradoensis (Pilsbry, 1904) ウネムシロ、N. (H. ) hizenensis (Pilsbry, 1904) ヒメウネムシロを含む)に近縁である可能性があり、生殖器や消化器の形態比較も行った。その結果、シンサクムシロはクロスジムシロ種群とは別種であること、またクロスジムシロ種群内にも別種が含まれている可能性が見出された。
 シンサクムシロが棲息するえび池は、比較的規模が小さいこと、周辺は椿の群生林に覆われているため観光客の往来が多いことなどから、本種の現況は必ずしも安泰ではなく、今後池の環境悪化が進むと、短期間に本種が絶滅してしまう可能性は十分考えられる。

Tamaki, A. & Fukuda, H.: Morphology and habitat of an undescribed nassariid endemic to anchialine pools of Kasayama, Hagi City (Gastropoda).