豊橋総合動植物公園内で繁殖したアシヒダナメクジ
松岡敬二°・井澤伸恵・安井謙介(豊橋市自然史博物館)

 豊橋総合動植物公園内にある植物園の養生温室でアシヒダナメクジ科(Family Veronicellidae)に所属するアシヒダナメクジLaevicaulis alte (Ferussac, 1821)の繁殖を確認した。アシヒダナメクジは、インドを模式産地とする熱帯性の大型ナメクジで、東アフリカ、インド、スリランカ、中国南部に分布している。本来、わが国には分布していなかったが、1969年に徳之島、1973年に奄美大島、1977年に沖永良部島などで移入が確認されている。現在では、広く琉球諸島に分布している。
豊橋総合動植物公園内で最初に捕獲されたのは2001年6月で、3棟ある養生温室の西側からである。今年8月には、小型から大型の個体が多数見られるようになり、温室内で繁殖していることが確認された。温室内での移入は、温室内で一時養生するドラセナ類が沖縄県宜野湾市から購入されており、その鉢に潜んでいた個体ないし卵によるものと考えられる。
アシヒダナメクジの繁殖に伴い、養生中のオリヅルランに捕食被害がでたため、「特殊病害虫」として駆除をはじめた。駆除方法は、温室の床面に水を張り、水面に上がった個体を1つずつ箸で捕獲した。その後に、駆除方法としてメタアルデヒドを有効成分とする市販薬剤ナメトックスを使っている。

Keiji Matsuoka, Nobue Izawa and Kensuke Yasui: Laevicaulis alte (Ferussac, 1821) bred in Toyohashi Zoo and Botanical Park.